特集

「若者の街」下北沢の子連れお出かけ事情
2013年・小田急地下化で、バリアフリー化進むか

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■増え始めた下北沢の子ども服専門店

 老舗洋品店「TARO'S HOUSE(タローズハウス)」(北沢3)の店主阿部さんは「最近下北沢にベビーカーは増えたように思う」と話す。確かに、街でベビーカーを見かける機会が増えた。子ども服専門店の数は、子連れマダムの聖地というイメージのある自由が丘や二子多摩川にはまだまだ及ばないが、それでも北口を中心に点在するようになった。

約40年前からある老舗店「Shirakaba(シラカバ)」(北沢2)や、フランスの有名ブランド「Petit Bateau(プチバトー)」(同)、リーズナブルな価格で人気の「Fruits Basket(フルーツバスケット)」(同)など、子ども服を専門に扱う店舗は一番街・北口エリアだけで現在6店舗ある。さらに最近の傾向として、古着店や大人向けの洋服店が子ども服を扱い始めていることも見逃せない。一番街を歩くと、子ども向けのアロハシャツやTシャツをディスプレーして、大人用の服と並行して扱っている店がいくつもあるのに気が付く。前述の「TARO'S HOUSE」では大人と全く同じ仕様のポロシャツを身長100センチのサイズ下北沢を通るベビーカーから扱っている。「子ども特有の服ではなく、大人でも満足するもののみを置いている。おそろいで買っていくお客さんもいれば、あえておそろいは嫌だ、という方もいらっしゃる」(阿部さん)。いずれにしろファッションに関心の高い親たちが、自分の服を選ぶついでに好みにあった子ども服も買っていくのだろう。

個人が開く子ども服専門店もここ1~2年で相次いでオープンした。子育て世代の母親が自ら開いている店としては、下北沢と笹塚の中間にある「Faire Cou Cou(フェールクークー)」(大原1)と今春オープンした「Caramel Crunch(キャラメル・クランチ)」(北沢3)。「Faire Cou Cou」は良質の素材を使った国産のシンプルなデザイン服が並んでいる。対照的に、手作りの個性的でポップな作家作品がそろうのが「Caramel Crunch」。南口にも、地元在住のオーナーが開いた高級ブランド子ども服中心の「笑夢(えむ)」(代沢5)が昨年オープンしている。テイストの違う小さな店が増えてきているのは、いろいろな個性を受け入れる下北沢らしいと言うべきか。

■個人店ならではの心づかいに期待

買い物をした後は、ランチやお茶でのんびりしたいものだが、飲食店の子連れ事情はどうだろうか。子どもを遊具スペースで遊ばせながら、近くで親がくつろぐことのできる今はやりの「親子カフェ」などはまだ出現していない。分煙・禁煙の店、キッズメニューのある店も多くはない。もともと個人経営の小規模な店が多いため、ベビーカーで入りにくいことも多いのが現状。だが、小さなカフェが多い下北沢ならではの利点もある。受け入れる店側の気持ち次第で、大人向けのカフェも「子連れも居心地よく過ごせるカフェ」に変身することができる。

小さな店構えがアットホームなFaireCouCou

例えば、平日の午前中や昼間の比較的客の少ない時間は積極的に子連れ客を受け入れるカフェも出てきている。「和カフェWa-cha-cha」(北沢2)では平日の午前中は親子6組で貸し切ることができ、子連れ客の人気を呼んでいる。また「Rooms(ルームス)」(同)のように靴を脱いであがり床に座るタイプのカフェも、はいずり回る小さな乳児の母親たちにはありがたい存在になている。いずれも、設備や広さなどハード面ではなく、店主の人柄や気配りなどソフト面をウリに子連れ客を受け入れているのが下北沢の飲食店の特徴といえそうだ。

■2013年の小田急線地下化で、子連れ事情は変わるか

ただ、下北沢が「子連れであふれる街」になるにはまだ足りないものがある。それは、オムツ替えや授乳する場所。一番街にある、せたがや子育てネットワークが運営する「カフェぶりっじ」(北沢2)は無料で対応してくれるが、2階にあるためベビーカーではやや利用しづらく、土曜・日曜は閉まっているため使えない。前述の子連れを歓迎してくれるカフェや子ども服店も、スペースが限られているため、オムツ交換台がある店はほとんど見当たらない。結局、込んでいることも多いスーパーのトイレか、授乳スペースもありトイレ設備も充実しているタウンホール(北沢2)に駆け込まざるを得ないが、地元生活者でない限りそうした情報もなかなか把握できない。

wa-cha-chaにはおもちゃも用意されている

2013年の小田急線の地下化が完了して駅内のバリアフリー化が進むと、ベビーカーの母親たちにとって下北沢は利用しやすい場所となる。「子どもができても出産前のように自分も楽しみたい」という母親たちが増えている今、子連れで、下北沢で過ごしたいというニーズはますます高まってくるだろう。それに応える設備の充実に期待がかかるが、若者をターゲットとする傾向の強い街がどれだけ子連れ客に目を向けるかにかかっているのではないだろうか。

(寄稿・石塚由香子)プロフィール=下北沢近辺を利用する母親をターゲットとした情報誌「まちとこ」を2007年から発行。1児の母でもある。「まちとこ」は下北沢の三省堂を始め、約20カ所で販売している。価格は100円。

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