下北沢オリジナルロゴ入り「アイカサ」
提供:Rethink PROJECT 制作:下北沢経済新聞
下北沢では、約四半世紀前から、駅周辺の町会と商店街の皆さんで定期的にパトロールが行われています。当初は防犯を目的としたもので、警察や世田谷区の町作りセンターとも共同で活動をしてきました。
そのおかげで治安の面では、かなり効果が上がっているものの、代わりにゴミの多さが目につき、近年はパトロールに加えてゴミ拾い活動がメインになっています。
シモキタクリーン作戦の様子
そんななか、コロナ禍の緊急事態宣言により、町会および商店街有志による活動は一時中止されましたが、その間、飲食店の大半が早めに閉まるようになった結果、駅前の外飲みが増え、喫煙所の閉鎖などとあいまって、駅前広場周辺が外飲みスポット化してしまいました。
清掃前には、駅前広場にゴミが散乱
そこで、各地で環境美化の取り組みを行っているJTが、下北沢でも清掃活動を開始。後に町会と商店街有志とも合流し、現在は共同で活動を行っています。
JTの清掃活動の背景にあるのは、各地の自治体とも協力しながら行っている「Rethink PROJECT(リシンク・プロジェクト)」です。「Rethink PROJECT」とは、JTがパートナーシップを基盤に取り組む地域社会への貢献活動の総称で、「Rethink=視点を変えて、物事を考える」をキーワードに、新たな視点や考え方を活かして、自治体や企業などのパートナーと一緒に社会課題と向き合うプロジェクトです。
下北沢では、この「Rethink PROJECT」をベースにした清掃活動とともに、これまで各地で行ってきた「Rethink PROJECT」を通して協力関係を持つ傘シェアリングサービス「アイカサ」を導入し、同サ―ビスの利用がスタートすることとなりました。
「アイカサ」サイト
「アイカサ」は、2018年12月にサービスを開始した、日本初の本格的な傘のシェアリングサービス。現在は東京駅や新宿駅をはじめとした都内全域に加え、関東、関西、福岡、岡山、愛知などで展開し、スポット数は今や約1,100箇所。
利用にはスマホアプリでの登録と、使い放題月額280円。または一回110円が必要ですが、日本全国どこのアイカサスポットでも傘を借り、また返却場所もアイカサスポットであればどこでも可能。これにより突発的な雨にあっても、アイカサを借りて利用することで、その都度ビニール傘を購入するといった必要がなくなり、また傘の放置ゴミ削減にもつながります。
JT東京支社は、下北沢周辺の清掃活動をする中で、ビニール傘が捨てられている点に注目し「アイカサを使って、下北沢の街の美化の一助となればと提案をさせていただいた」と話します。
では、実際にアイカサ設置に関して下北沢の方々に「下北沢への思い」と「アイカサに期待すること」について、お話を聞いてみました。
下北沢商店連合会長の柏雅康さん
下北沢商店連合会長の柏雅康さんは、現在の下北沢駅周辺の状況と、今回の取り組みについて、次のように語っています。
「下北沢では四半世紀前から商店街と町会、自治会による防犯パトロールを続けていて、これまでに300回ほど開催しています。私が商店街の理事長になったのが18年前で、それまで副理事を6年やっていたので、ほぼ同じぐらいの期間ですね。また、近年は空き家が多くなり高齢化も進んでいるため、その見守りとして防犯パトロールとは別にナイトパトロールというものも行っており、こちらは昨年の夏で100回を超えました。パトロールのおかげか、下北沢での犯罪は比較的少ないのですが、それと反比例するように近年は路上ゴミが目立ち、今はゴミ拾いが両パトロール活動の中心となっています。
駅前広場を居心地のいい空間にしようと試行錯誤を重ねているのですが、喫煙所を作ってもその周囲に吸い殻があったり、ベンチを設置するとその上にゴミが捨てられてしまったりというような、おそらく今後も続くような問題が起こっています。これを改善していくには、住民の方や、下北沢を訪れる方々の意識を変えていく必要があると考えています。
今回JTさんやアイカサさんと連携することで、まずは傘の放置を減らし、綺麗な街にしていきたいと考えています。特に、捨て傘は一回の清掃活動だけで20本近くを回収するほどなので、アイカサさん効果には期待したいですね。
下北沢は私たち街の人間と、企業さんや商業施設の方々とも連携して、駅を中心としながら周辺の街の回遊性を高める魅力作りをしようと常に話し合い、さまざまな施策を続けていて、それがうまくいくことで魅力的な街づくりが成功しているエリアだと思っています。綺麗な街づくりもそのための一貫ですね」
小田急線の下北沢駅東口にあるアイカサ設置風景
金子ボクシングジム代表・下北沢東会会長の金子健太郎さん
金子ボクシングジム代表で、下北沢東会の会長を務めている金子健太郎さんは、父・繁治さんが1965年に同ジムを開いた当時はまだ3歳。物心つく以前から下北沢を見てきました。
「父が東京青年会議所などに入ってボランティア活動をしていたので、私もその意思を継いで商店街などを手伝っています。以前は世界チャンピオンを育てることばかり考えていましたが、商店街の会長をやるようになってから、やっぱり足元も大事だなと思うようになりました。駅からジムまでの街並みに空き缶や吸い殻が落ちているのも気になりましたしね。
そこで、たとえば駅前だけでなく、うちにも作ってしまえばいいと、ジムの敷地内に喫煙所を設置して、近所の方たちにも使っていただいたりしています。少しでも街を美化することで、住んでいる人たちの意識も変わっているのを実感しています。
下北沢は戦後の闇市から始まった街なので、古き良きものは残しつつ、新しいものも取り入れて、常に魅力的であって欲しい。そのためには商店街主催でイベントをやったり、街に根付くエキスパートの方々の手を借りて大道具作りから書類手続きまでやったりしています。目標は街の人たちが積極的に協力や参加したくなり、外から来る人たちにとっては再び訪れたくなる街を作ること。ジムの入口にアイカサを設置したのも、その一貫です。駅前の開発は続いていますが、それと同時に街の人たちの努力で、下北沢はもっと良くなっていくと期待しています」
金子ボクシングジムの玄関に設置されたアイカサ
本多劇場グループ総支配人・本多愼一郎さん
本多劇場は、演劇の街下北沢を代表する、演劇専用の劇場。1982年、本多劇場グループ代表の本多一夫さんが前年開場した「ザ・スズナリ」に続いて設立。今回は一夫さんの息子で、現在本多劇場グループ総支配人を務める本多愼一郎さんに、街の風景やアイカサ導入について伺いました。
「父は北海道出身で、上京して役者業をしていたんですが、親元が倒産してしまったのでバーを開いたんです。もともと役者だったので、スターの皆さんが飲みにきて、たまに他のお客さんにお酌してくれたりして話題になって、そこから下北沢周辺に飲食店をどんどん拡大していきました。一時期は50軒ぐらいのオーナーになっていたようです。
ですがあるとき、かつてを思い出して急に劇場を作ろうと思ったそうです。そこで飲食店をほとんど売り渡して資金を作り、1981年にザ・スズナリ、翌年に本多劇場を設立しました。以来40年、僕も一緒に下北沢を見てきましたが、お店はどんどん入れ替わりながらも、下北沢という街の雰囲気は変わらない気がしています。いつの時代も若者が多いですし、いわゆる普通の会社勤めではなさそうな人たちがいっぱいいたり。だからといって観光地というわけでもなく、生活圏も同じように混在している。暮らしの場だし、遊びやデートにも使えるしと、多角的な面白さがありますよね。
ただ、ゴミは昔から多いですよね。そこら中に空き缶があって、昨晩ここで飲んでたんだろうな、と。コロナ禍で外飲みが増えましたけど、本多劇場入口前の階段は24時間開きっぱなしなので、悲しいことに、恰好の飲みスポットになってしまっています。ビニール傘のポイ捨ても多いです。そうしたことから、本多劇場では階段途中にアイカサを設置させていただきました。傘を返せる場所があったらポイ捨てしなくなると思うんです。
設置してからまだ雨が降っていないので効果はまだ分かりませんが、役立ってくれるといいですね。特に観劇後、劇場を出たら降っていたりしたら、確実に利用してもらえると思っています。劇場での傘の忘れ物も多いんですが、ほとんど取りに来られないので、そのあたりにも良い影響があるといいですね」
本多劇場への入り口階段途中にあるアイカサ
ここまで、下北沢の街の方々に「アイカサ」への期待を聞いてきました。
今回、「アイカサ」導入検討の段階で、「下北沢オリジナルロゴ」の募集・制作ともタイミングが重なったことから、下北沢発アイカサにオリジナルロゴをプリントした「オリジナル傘」を製作し、この取り組みをPRしていくことになりました。これには、世田谷区も賛同し、公共施設への導入へとつながることで、今後の展開に期待を寄せられています。
世田谷区の中でも特に多種多様な文化が交差する街・下北沢を地域内外に向けて強く印象付けるため、下北沢の魅力を効果的に発信するための企画として、「下北沢オリジナルロゴ」の募集が2022年7月22日~9月30日まで行われました。
選ばれたのは、楽しく、ワールドワイドに、いろんな人が自由に集う下北沢を切り紙風に表現しロゴ。こちらが下北沢発のアイカサにもプリントされ、利用者によって全国のアイカサスポットへと旅立っていくこととなります。
こちらの下北沢オリジナルロゴが入ったアイカサは、5月から順次展開の予定です。アイカサで借りた傘は全国のアイカサスポットどこで出ても返却可能なので、下北沢ロゴが日本中に広がっていくことになるのかもしれません。
シモキタを愛する方々も、シモキタを訪れるみなさんも、一度使われてみてはいかがでしょうか?