■17年ぶりのネタ作り 「うれしさと怖さが共存」
―単独公演の話が出始めたのはいつごろだったのでしょうか?
ゴリさん(画像右:以下、ゴリ 敬称略) 会社から「20周年だけど、単独公演やりますか?」という話が来て、「うわー、やりたくないなー」と(笑)。川田にも「もう何年もやってないし、ムリだよね?」って聞いたら「いいよ」って言われて。「うわ! 川田ノリ気だー!」ってなりました(笑)。
―川田さんはノリ気だったのですね(笑)
川田広樹さん(画像左:以下、川田 敬称略) 「いいよ」どころか、「よし! やってやろう」って思いました。もう後には引けない感じがしていたので。
―ネタはどちらが考えられているんですか?
ゴリ 僕が書いて、それを川田と合わせながらやって、しっくりこなかったら変えたりしています。実は僕ら、ネタを作るのは17年ぶりなんです。単独公園は7年ぶりだけど、そのときは作家さんが脚本を書いてくれたので。今回はネタ8本と、転換のための音声コント7本、全て自分たちでつくる新ネタ。既存ネタはゼロです。
―普段からネタを作ってはいたのですか?
ゴリ いえ、全然作らないんです。だから、芸人さんって普通は1カ月前とかからネタつくるらしいんですけど、今回はもう半年前から作り始めて。作って読んで、面白くなかったら修正という作業をずっと繰り返していました。それでようやく最近ネタが決まって、そこから二人で合わせていて、まさにここからっていう感じです。うれしさと怖さが共存していますね。
―でもうれしい気持ちも、やっぱりあるんですね。
二人 あります、あります。
川田 楽しさ半分、こわさ半分。ドキドキしていますね。
ゴリ 「ウケなかったらどうしよう」っていうのはずっと思っています。スベったときの感覚、本当に恐ろしいんですよ。照明はガンガン当たっているし、舞台の上から逃げられない。お客さんにスベったことが伝わると、「うわ」って同情の顔されますし。その後何をしゃべってもどんどん悪い方向に流れていってしまうんです。テレビだと編集でカットすればどうにかなりますけど、舞台上では、そうはいかないですから。
川田 二人きりのイベントはデビュー当時の単独ライブ「オオカミ少年」以来。一度原点に戻って、自分たちを追い込まなきゃ駄目だと思ったんです。僕らはテレビに出るのも早くて、3年目で冠番組を持たせてもらったし、レギュラーの本数も増えていって、もうネタ作らなくてもやっていけるようになって、いわゆる芸人らしいことをやらなくなったんですね。僕自身、テレビ出演が一つの目標だったから、舞台ってものを大事にしてこなかったんですよね。
ゴリ あらためて20周年で単独公演をやると決めたとき、芸人としてもう一回見直す時期が来たなと思ったんです。だから作家にも甘えず、自分たちで作ろうということになりました。
■「単独ライブは怖い。でもそこまで追い込まないと」
―20年の歴史の中で、渋谷公園通り劇場からスタートして「エンジョイプレイ」でブレークして、そこからテレビに出たり映画監督を務めたりされ。キャリアを「○○期」というまとめ方でいくつかに分けるとすると、いまの時期は、お二人にとってどんな時期だと思われますか?
川田 「初心」ですかね。ここにきてもう一回ゼロから作っていくという気持ちです。
ゴリ 僕も、原点回帰だね。
―昨年からそういった気持ちはあったのでしょうか? それとも周りから20周年を騒がれ始めてからですか?
ゴリ 今回の単独公演を決めた日からですね。決めるまでは、またネタを作家に頼んでもいいかなと思っていたんですけど、いま自分たちをどういうふうに追い込んだほうが、未来があるかなって考えたんですよ。ネタを作ることに、これまでは逃げていたことがあって。このタイミングで自分と向き合あうのが大切かなと思いました。あと、川田と二人で「お笑い」を考えることをずっとしてこなかったから、今あらためて、20年やってきたなかでどういうものが面白いと思うのか、どういうものを学んできたのかっていうのを出し合えば、これから先のガレッジセールをスタートさせるためのライブになると思ったんです。そのライブの結果、「二度とコントやるの、やめよう」って思うかもしれないですけど(笑)。でも本当にそこまで追い込まないと、もう変われないんじゃないかなって思っています。
―これまでテレビ出演もされて、キャリアを積んだお二人なら、多少の追い風はあるのではないでしょうか?
川田 それを考えられないくらい、単独ライブって怖いですよ。心境は最初の単独ライブのときと全く一緒です。無名の芸人が「さぁどれだけ笑いとれるんだ」って試す感じ。
ゴリ 舞台に定期的に出ていれば、固定のファンもある程度は付くと思います。でも僕らは舞台をやっていないから、ファンの顔が見えない。そもそもネタをやるイメージもあまり持たれていないですし、そういう意味ではお客さんも「どんなことやるんだろう?」って探りあっている感じじゃないかと思います。
■下北沢の定食屋で「応援するから売れたら店を紹介しろよ」って
―渋谷公園通り劇場からスタートしたお二人ですが、渋谷と下北沢は近い距離にあると思います。若手のころ、下北沢にはよく来られていたんですか?
ゴリ 僕は大学時代は俳優を目指していたので、ずっと演劇をやっていたんです。そのとき初めて立った舞台が、北沢タウンホールでした。そこで「木の精霊」の役をやったんです(笑)。僕の初舞台の劇場で20周年迎えるとは、思ってなかったですね。
川田 コンビ組んでからは「屋根裏」や「本多劇場」でよくライブやってましたよ。まさに17~8年前ですけど。だからその二つの会場にはいろいろと思い入れがありますね。※編集注:「屋根裏」は今年3月に閉店(下北沢のライブハウス「屋根裏」29年の歴史に幕へ-閉店理由は明かさず)
―打ち上げやプライベートでも下北沢を使っていたのですか?
川田 沖縄料理屋さんに行ってましたね。打ち上げで。
ゴリ 泡盛飲みたいから(笑)。あと、「ザ・スズナリ」もよく行っていました。大学時代の先輩が舞台をやっているのを見に行ってました。
川田 あとホンコンさんが串焼き屋さんを出してたときはよく行ってましたね。僕、釣りバカなので、釣ったタイとか持っていって、さばいてもらってました。
―最近は下北沢もお笑いの街として栄えてきました。「リバティ」や「シアターミネルヴァ」といったお笑いイベントに積極的な劇場も増えていますし、駅を出たら若い芸人さんたちが無料お笑いライブの呼び込みをやっているのを見かけます。お二人は下北沢にどんなイメージを持たれていますか?
ゴリ 下北沢の若者って「売れてやる」ってギラギラしていて、活気があっていいですよね。そしてそれを支えるのが安くて量が多い定食屋のおじちゃんおばちゃんたち(笑)。皆で店に集まって夢を語っていて、それで「ちゃんと応援してるから、売れたらウチの店紹介しろよ」って。あのやりとりがいい。
川田 あと肉巻きオニギリの「ニックンロール」とか好きです。本多劇場で公演やったときによく買いに行ったのを覚えています。いい店が多いし、音楽も演劇もあって刺激的ですよね。
■合コンで話術や度胸を磨いた時期も
―お二人も下北沢で若手時代を過ごしたとのことですが、若手の人たちに、今のうちに努力した方がよいことなど、伝えたいメッセージはありますか?
ゴリ 僕は若いころ、合コンとかナンパばっかりしていた時期ありました。人を引き付けるための話術や度胸が身につくし、恥をかいて実力を知れるので。あとは、ネタをとにかくたくさん作ること。まだ売れていないときはほかの芸人さんのネタをいっぱい見ていましたけど、それ以上にコメディー映画とかも見ていました。僕らのころはユーチューブとかなかったから、レンタルビデオ屋で借りてきていて。
実は「エンジョイプレイ」というネタも、映画の「バックトゥザフューチャー」から生まれているんです。主人公を務めたマイケル・ジェイ・フォックスのお父さんが、テレビを見ながらすごく変わった笑い方をするんですね。それを見て、何かネタになるんじゃないかって考えました。そしたら「エンジョイプレイ」が浮かんで、まず芝居をやって、突然笑い始めて、オチを後で言うという構成が完成したんです。当時はこの構成が斬新でブレークして、「沖縄出身のお笑い芸人なんて初めてじゃない?」って盛り上がって。当時も、これまでにないジャンルの笑いを作りたいって思っていたんでしょうね。
■昔のネタは「ファーストキスみたいな雑さ」、今回はアダルトなキスを
―ネタバレにならない範囲でお伺いしたいのですが、新ネタはどういったものをやる予定ですか?
ゴリ 今回、半分は川田がボケを担当します。そこだけいつもと逆に。
川田 そうですね。相方から台本を渡されたとき、「あれ?」って(笑)。
―まったく新しい試みになりそうですね。そもそもボケとツッコミは、結成当初から決まっていたのでしょうか?
川田 そうですね、相方のキャラが強かったので、彼がボケて、というのは決まっていました。
ゴリ でも川田もボケが好きだから、せっかくなら20周年だしいろいろ挑戦しようかと。
川田 昔のファンの方が来てくれたらうれしいですね。年齢も僕らの年に近くなっているでしょうし、成長しているかどうか見てもらいたいです。
―初見の方もいれば古くからのファンもいて、さらに地元客もいれば沖縄から見に来るファンまで、当日の客層はさまざまだと思いますが、見どころはどういったところにありますか?
ゴリ 二人でボケもツッコミもやるし、ネタも新しいし、全部バラバラなのにそれぞれが最後につながってくる。そういった全体を通した楽しさがあるので、そこは見てほしいと思います。
―17年前とは、テイストも変わりますか?
ゴリ 全然違いますね。昔のやつ、今見たらスッカスカなんです。知識や人生の浅さがあったのかもしれないんですけど。台本作りも、オチへの持って行きかたが強引で、ファーストキスみたいな雑さがある(笑)。ある意味その初々しさがよかったのかもしれないですけど、今はもう、ジョージクルーニーがしそうなアダルトなキスになってる(笑)。
―経験値のぶん厚みが出ていると(笑)。当日は、新しいガレッジセールを見てもらうということになりそうですね。
川田 そうですね。でも、やることは僕らが面白いと思ったことをやるので、そこのスタンスはデビュー当時と変わってないと思うんですよ。軸はズレていないはず。
ゴリ 20年間芸能界にいて、多分その中でもんできたものしか脳から出てこないので、これまでの集大成にはなるかと思います。そういう意味では、構成の持って行き方は前よりうまくなっていると思うけど、基本は変わってない。古くからのファンの方も、テレビでしか見たことがない方も、楽しんでもらえればと思っています。
―当日、楽しみにしています!
(文責:カツセマサヒコ/下北沢経済新聞)
【プロフィール】
お笑いコンビ・ガレッジセール
吉本興業所属。1995年結成。(左)川田広樹(かわたひろき)さん。1973年生まれ、沖縄県出身、A型。(右)ゴリさん。1972年生まれ、沖縄県出身、A型。
【当日情報】
「ガレッジセール結成20周年単独Live~波の上ビーチから始まった~」
7月5日(日) (1)13:30開場/14:00開演 (2)18:30開場/19:00開演
料金は前売り=4,000円、当日=4,500円。「チケットよしもと」などで販売している。
下北沢でガレッジセールが結成20周年ライブ 17年ぶり新ネタ披露