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インタビュー2015-04-27

「下北沢はお笑いに優しい街」
漫才師・磁石とK-PRO代表が考える「芸人が稼ぐ方法」

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下北沢の劇場では、演劇だけでなくお笑いライブが毎日のように開催され、お笑い専用の劇場もある。ライブというものの魅力は何なのだろうか。また、お笑い芸人はライブで稼げるのだろうか。その実態を聞くべく、お笑いライブの主催者と、第一線で活躍する漫才師にインタビューを行った。

■お笑いライブフェス「下北沢大興行」の成功で盛り上がるライブの現場

下北沢は「音楽」や「演劇」などで語られることが多いが、近年は「お笑い」も盛り上がってきている。4月18・19日には、下北沢の5カ所の会場で20以上のライブを行うお笑いライブフェス「下北沢大興行」が開催され、ほぼすべての会場でチケットが完売した。

主催は舞台やライブなどのイベントを手がける「SLUSH-PILE.PLUS」(世田谷区)。プロデューサーの片山勝三さんは同フェスの公式ホームページで「テレビで見る姿がその芸人の全てではありません!テレビで見る芸人が全ての芸人ではありません!世の中には面白い芸人がたくさんいます!」と熱い思いを語っている。ライブにこだわる姿勢が、「お笑いライブフェス」という新しいイベントを生み出した。

実際に下北沢大興行では、ライブならではの笑いが生まれていた。

(提供:下北沢大興行)

「北沢タウンホール」(北沢2)で行われた、芸人たちの心の中で浄化できずにいるネタを語る「芸人遺産」では、テレビでは見られない貴重なネタが目白押しだった。ナイツの塙宣之さんは「ネタの作り方が分からなくなった」と吐露。そんな悩みを抱えながら作ったという異色のネタを披露すると、共演者たちから「事故現場」などとつっこまれた。スタッフのミスにより、肌着のような透ける素材の衣装を身につけたサンドウィッチマンは、ネタ中に過激なセリフを連発。サンドウィッチマンの富澤たけしさんはネタ終わりに「テレビ的じゃない」と自虐した。電撃ネットワークが英語で海外公演でのネタを披露すると、会場全体が一体化する場面も。
(提供:下北沢大興行)

「小劇場B1」(北沢2)で行われた「ノーセンスユニークボケ王決定戦」には、オジンオズボーンの篠宮暁さん、流れ星のちゅうえいさん、キックさん、いち・もく・さんのくぼた隆政さんなど、「笑いのセンスがない」と自称するお笑い芸人が出演。イベント中、出演者たちはハイテンションで会場の設備や観客をイジり、舞台と客席が近い空間ならではの盛り上がりを見せた。
(提供:下北沢大興行)

「本屋を使ってとにかく大喜利するライブ」では、どきどきキャンプの佐藤満春さん、キングオブコメディの高橋健一さんなどの出演者が「本屋B&B」(北沢2)の店内を歩き回り、お題に沿う本を探しながら大喜利を行った。

片山さんは「テレビにばかり頼るのではなく、自分達で『お笑い』というエンターテイメントを強烈に発信していきたい」(同フェス公式ホームページより)ともコメントしている。「下北沢大興行」によってライブの可能性を証明したのではないだろうか。


■お笑い芸人が“稼ぐ”にはどうしたらいい?

お笑いライブの可能性を広げるには、どのような条件が必要なのだろうか。ライブの実態を聞くべく、月に3,000人以上の観客を動員するお笑いライブ「K-PRO」を10年以上主催し続ける児島気奈(きな)さん(中央)と、結成15年目の漫才師・磁石の佐々木優介さん(左)・永沢たかしさん(右)に聞いた。

―児島さんは「K-PRO」として月に何本くらいのライブを開催しているんですか?

児島 今は月に40本。下北沢と新宿を中心に開催していて、ほとんど下北沢の劇場がメインです。下北沢のライブには1公演でだいたい10組から15組くらいの芸人さんに出てもらっています。

―かなり多くの芸人さんが出ているんですね。磁石さんは月に何本くらいのライブに出ているんですか?

永沢 月によりますけど5本くらい。K-PROライブと、毎月やっている事務所ライブ「ホリプロお笑いライブ」と、渡辺正行さん主催の「ラ・ママ」っていう渋谷でやっているライブです。

―テレビとライブのお仕事ではどちらが多いですか?

永沢 どっちもそんなにないですよ。3月まではよかったですけど、4月のスケジュールを聞いて、何もなさ過ぎて愕然としましたからね。

佐々木 安定はしてないですよね。

―例えば、どういうスケジュールがあると安定している状態ですか?

佐々木 スケジュールを見たときに「大丈夫だな」とひと安心するのは、営業が3本くらい決定であって、出たことないテレビ番組なんかが2つくらい入っていて、これは腕試しになるから。でもそれじゃ足らないもんな……。営業はやっぱり5本にしておきます。

(一同笑)

永沢 やっぱりお金になる仕事がないと暮らせないですからね。

佐々木 ギリギリに入ってくる仕事もあるから、ここから他の仕事も2つくらい入るだろうって。で、その後テレビのネタ番組なんかが2つくらいがポコポコ入っていて、ラジオのゲストで3本くらい呼ばれて。で、ライブが週に1本か2本くらい入っていると「ああ、よかったな」と思う。

―具体的にありがとうございます。5本ほしいとおっしゃっている営業の仕事は、テレビで認知度があがると入ってくるのでしょうか?

永沢 まあ、そうですね。

―認知度をライブで上げるのは難しいですか?

永沢 正直、そうですね。昔はライブがそのままテレビの仕事につながったりしたんですけど、最近はそれがなくなってきていますね。10年前と比べて。

―それはどうしてでしょうか?

永沢 テレビのオーディションとかが増えたなっていう感じがします。前はテレビ局の人がライブに来て、面白いやつがいたらテレビに出す、って感じだったんですけど。今はやり方が変わってきたみたいです。

児島 2分間で一発芸を見せてくださいとか、テレビ局側がフォーマットを提示してそれをやるっていうっていうのが増えてきていますね。昔は舞台で輝いている芸人さんを見て、「これは面白い!」「この人を使いたい!」となることが多かったので、K-PROもそういう機会になればいいなとは思うのですが…。テレビの人にも、舞台の盛り上がりを感じてほしいですね。

佐々木 僕らがオンエアバトル(2010年まで放送されていたNHK総合『爆笑オンエアバトル』)に初めて出たのはまさにそれなんですよ。ライブにNHKのスタッフさんが来ていて、「面白いね」ってなって出してもらって。別にネタ見せとかもなく。それだったらライブ自体のギャラが安くても意味あるじゃないですか。

―K-PROとしてはライブにどんな意味を持たせようと思っていますか?

児島 芸人さんたちが、少しでも自分たちの面白さをお客さまに伝える場として広く使ってもらえればなと思います。まずは無料ライブに気軽に遊びにきてもらうとか。お笑い芸人さんって面白いんだというのを体感してもらえれば、そこから芸人さんが活躍する場所も広がっていくのかなと。

―世の中にお笑いに馴染ませる下地作りがライブだと。

児島 そうですね。芸人さんもライブに取り組むことでファンの人や応援してくれる人がつくので、「応援してもらえるような芸人になろう」っていう一つの目標を持てるんじゃないかと思います。

―応援される芸人さんの条件は何だと思いますか?

児島 一番は、面白い。面白さで突き抜けた芸人さんは、お客さんからも憧れの目線で見られてるなっていうのを感じます。

永沢 でもエルシャラカーニの(山本)しろうさんとか面白いですけど、ファン一人もいないよ?

児島 そうですね……面白くても、お客さんがつかない場合もあります。

佐々木 言い直さなくていいよ(笑)。

永沢 一人もいないですからね。

佐々木 二人くらいはいそうだよ(笑)。


■お笑いライブにもっとお客さんを呼ぶにはどうしたらいい?


―芸人さんにとってライブとはどういった意味があるのでしょうか?

児島 若手の人とかは、テレビのオーディションに出る練習の場として舞台に立つ人も多いんです。テレビの第一線で活躍されている方でも、毎月1回は舞台で新ネタをおろす、って決めているコンビもいます。テレビでネタやバラエティを頑張るのプラス、目の前のお客さまを笑わせたいとか、もっとじっくり見てもらいたいという思いで舞台に立つ人は多くて。ネタを見せる場としてはテレビよりも舞台で、ライブ感みたいなものをお客さまに感じてもらいたいんだと思います。

―ライブの醍醐味ですね。読者に向けて、ライブはこんなに面白いよ、とプレゼンするとしたらどんなところですか?

永沢 うーん、来たことない人からするとお笑いライブはちょっと敷居が高いですよね。生で見ると面白いんですけどね。1,000円とかで値段も安いし。俺は、もともとお笑いはまあまあ好きくらいだったんですけど、でも東京来て初めて生でお笑いを見て、テレビで見るのと全然違って面白いなと思いました。

―具体的にはどういうところでしょうか?

永沢 なんていうんですかね。そればっかりは空気。テレビだと遮断されている空気。同じことやっていてもテレビで見るより生で見た方が面白いと思います。

―今、芸人さんのネタも動画サイトなどでも見ることができる時代ですが、「このネタは見た」「この人たちはもう知ってる」と思っても、ライブで見てみると違うんですね。

永沢 また違うと思いますね。僕が素人のとき、15年くらい前ですけど、鉄拳さんをテレビで見ていて、「この人面白いな」くらいにしか思わなかったんですよ。で、生で初めて見たときにすごく面白かったんですよ。多分やっていることは一緒なんですけど。そこまで違うんだなって思いました。

児島 あと、ライブが始まる前の雰囲気から楽しんでほしいですね。どんな人たちが出てきて、どんなネタやるんだろうな、どんな面白いことやってくれるんだろうなっていう期待感から始まって、ライブが終わったあとも、今日の楽しかったところを同じ空間で楽しんだ人同士で語りあうとか、続けて見に行く楽しさもあるので。特定の芸人さんを追っかけて、いろんなライブに足を運ぶってお客さまも結構いますよ。

佐々木 その(固定ファンの)絶対数はあげていきたいなと思いますね。それこそK-PROさんはすごくて、芸人のファンというよりもK-PROのファンが何十人も何百人もいる。

永沢 ライブの出演者がまだ決まってなくてもチケット売り切れたりとかしますからね。

佐々木 それすごいよね。

永沢 どうやら、K-PROならちゃんとやるだろうとお客さんは思ってるみたいで、だったらもう「チケット買っちゃえ」っていう。

児島 それはもう、毎回芸人さんがお客さんの想像を超えるくらいのことをしてくれるから、ライブに行けば満足して帰れるっていうのをお客さんもわかってくれてるんでしょうね。

―その信頼を作るために、K-PROとしてやっていたことっていうのはなんでしょう?

児島 毎回目標を満員にすることっていうのは絶対決めていたので。チケットの予約が少ないときはみんなでチラシも配りましたし、芸人さんに一緒にライブを盛り上げてほしいっていうのを伝えて協力してもらったっていうのが、多分一番大きいと思いますね。


■下北沢は「お笑いに優しい街」

児島 どんどん新規のお客さんを入れるっていうことにも力を入れています。最近はサラリーマンの方もライブに来てくださる機会も多いので、開演時間を19時など遅めにしたライブもやっています。

―新規のお客さんを呼ぶのは一番難しそうですね。

児島 そうですね。そういう意味では、下北沢という街は良かったんだと思います。普段から演劇や音楽ライブに行くっていう、現場に足を運ぶことに慣れているお客さまが下北沢には多いのかなと。お笑いライブが終わったあとに友達と今日のライブについて語る、っていうのを趣味にされてる方もいます。そういう意味では、街に飲食店がいっぱいある下北沢は、お笑いファンにとって居心地のいい街なのかもしれません。

佐々木 もともとはK-PROっていろんなところで、いろんな小屋でライブハウスでやっていたのに、最近は結構な割合で下北沢でやってるよね。

児島 やっぱりお笑いに優しい街に行きたいので。

―磁石のお二人は下北沢にどんな印象をお持ちですか?

永沢 そうですね。僕は本当に主観的になってしまいますが……、遠いなというのはやっぱりありますね(笑)。乗換の問題かも。

佐々木 街自体はすごく好きです。おしゃれな人が多いけど、気張らなくてもいいというか。まあ住んでる場所によるんでしょうけど、芸人は多分、新宿とかの方が都合いいですよね。

児島 でも劇場の数でいうと、下北沢も多いですよ。K-PROも下北沢のいろんな劇場を使って、3日に一回のペースで定期的にライブをやっていますから。無料ライブもあるのでお気軽に来てください。

佐々木 行きたいなって思った日にやってるよね。新宿の劇場も入れれば、毎日なんかしらやってる。

―お笑いライブの探し方がわからないという方もいるかと思いますが、とりあえずK-PROのサイトを見ればすぐ見つかりますね。最後に、お笑いを盛り上げるためにどういうことをしたらいいかっていうのはありますか?

児島 もちろん芸人さんの力はあるんですけど、運営する側ももっと全力でお笑いライブを打ち出していかないと、と思います。それこそ街ぐるみでできたらいいですね。お笑い芸人さんが街のイメージキャラクターとかになれば、お笑いを目にする機会も増えるのかなと。

―具体的にこういう人に盛り上げてほしいっていうのはありますか? 若手の方とか、ベテランさんとか。

児島 そうですね。浅草などを参考にすると、わりとベテランの方だとか師匠とかがメインになって、中堅とか若手の人とかでやっているライブを盛り上げてもらいたいですね。

【プロフィール】
お笑いコンビ・磁石
ホリプロコム所属。2010年結成。(左)佐々木優介さん。1980年生まれ、広島県出身。A型。(右)永沢たかしさん。1979年生まれ、秋田県出身。O型。
磁石・永沢たかしオフィシャルブログ「ドライブイン・ナガサワ」
「磁石のオールナイトニッポンモバイル」
最新DVD「磁石漫才フェスティバル~特別追加公演~」

(中央)児島気奈(こじまきな)さん
1982年生まれ、東京都出身。2005年に立ち上げたお笑いライブ制作集団「K-PRO」代表。下北沢や新宿を中心に月40本のライブを主催している。
K-PRO

【取材協力】
SLUSH-PILE.
お笑いを中心に舞台、ライブ、その他興行を手がけるイベント制作会社。番組制作やキャスティング、芸能人のマネジメントなども行う。

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