下北沢南口に昨年開業した詩歌・文芸の出版社「いりの舎」(世田谷区代沢5、TEL 03-6413-8426)が12月、初の出版物となる歌集「青白き光」を刊行した。
元短歌新聞社の玉城入野(たまきいりの)さんが開業した同社。開業のきっかけは、1953(昭和28)年に創刊した月刊紙「短歌新聞」が昨年12月に終刊を迎えたこと。「新たに短歌文化を引き継ぐべく独立開業した」(玉城さん)。
同歌集は、福島県大熊町で農業を営みながら反原発の短歌を詠み続けてきた歌人佐藤祐禎(さとうゆうてい)さんによるもので、2004年に短歌新聞社から刊行された歌集をあらためて同社が文庫版の形で再版した。「小火災など告げられず原発の事故にも怠惰になりゆく町か」「原発に勤むる一人また逝きぬ病名今度も不明なるまま」などの短歌が収められている。
玉城さんは「本書の中では、福島第一原発事故の25年以上も前から原発や放射能の危険性が訴えられている。予言書のような趣があり、社会的な記録としても優れた一冊。今こそ多くの方々に読んでもらいたい」と呼び掛ける。「震災を経て歌を詠む人も増えつつある。世代間の交流を深めながら、下北沢に新しい文化を作っていくような活動に努めていきたい」とも。
同書の価格は700円。八重洲ブックセンターなどで扱う。