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下北沢地域専門の不動産業者に聞く
【第1回】下北沢で一人暮らし用賃貸物件を探す

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■下北沢の賃料相場はどのくらい?

―下北沢の一人暮らし用物件の賃料ですが、現在の相場はどのくらいなのでしょう?

志村 1K・1Rで大体8万円台後半というところ。約10年前の相場は7.5万円くらい。4、5年前に一度ピークがあって、9.4万円くらいまで上がりました。ピーク時に比べると、少し下がってきましたね。

―相場が変動した理由は?

志村 10年くらい前までは、まだ木造アパートが多かった。一時期、ある建設会社が1Kで25平米くらいの鉄筋造アパートを作ってみたら入居率がとても良かったんです。それまで下北沢近郊の物件は業者ではなく個人が管理していることが多かったので、「貸すものに対してお金をかける」という意識がそこまで高くなかったのですが、そのあたりから少し変わりました。

―賃貸のサイトで家賃相場を調べてみると、小田急線沿線でも井の頭沿線でも、新宿から下北沢、渋谷から下北沢までの相場が高くて、下北沢より下るとガクッと相場が下がっているようです。

志村 そうですね。下北沢は三軒茶屋と近いですが、三軒茶屋は以前から不動産業者が所有管理している物件が多かった。三軒茶屋に比べて、下北沢はここ10年で相場が変動していると思います。

―初期費用はどうでしょうか。

志村 全国的な傾向として、不況の影響もあって「敷金1、礼金1」(それぞれ家賃1カ月分ずつ)の物件が増えてきています。10年くらい前までは「敷金2、礼金2」(敷金が家賃の2カ月分、礼金が2カ月分)が半数以上を占めていたと思います。家賃は以前と比べてそれほど下がっていませんが、初期費用が下がっているので借りる方としては探しやすくなっているのでは。

■下北沢にはどんな物件が多い?

―下北沢は、一人暮らし用の物件は多いのでしょうか?

志村 1R、1Kが全体のほぼ6割弱を占めます。一人暮らし用ですね。2DKや1LDKもあるにはありますが、極端に賃料が高いか、もしくは古いか、という場合が多い。そのせいもあってか、下北沢は若い夫婦が少ない印象がありますね。

―部屋を探しに来るのは、どんな人が多いですか?

志村 すでに下北沢に住んでいて、下北沢内でまた部屋を探したいという人が多い。次に多いのが、都内のどこかから下北沢に引っ越すという場合。どちらかというと女性が多いように思います。年齢層では、物件を探しに来る方は20代前半から30代後半までいらっしゃいますが、実際に契約を結ぶのは20代後半から。若い方の場合、想像していたより家賃が高いということが多いようです。学生さんも少ない。

―どんな物件が人気なのでしょう?

志村 ほとんどの方が、バス・トイレ別、鉄筋造を希望されます。女性だと、さらに2階以上、オートロックで、という条件を8割以上の方がおっしゃる。それから、ペット可の物件は数があまりないので人気が非常に高い。条件がすべてそろっている物件はそれほど多くはないので、人気物件に内見が集中することはよくあります。

―下北沢の物件探しで気をつけたいことはありますか?

志村 駐輪場の問題ですね。駅まで自転車で行くつもりで駅から徒歩15分以上の場所に部屋を借りる方もいると思います。でも、下北沢は駐輪場がすごく少ない。区が管理している駅周辺の有料自転車用駐輪場は、月決めが1カ所、日決めが2カ所。すべて合わせて300台以下で満車になりやすい。また、どの駐輪場も駅まで2、3分はかかります。さらに、3カ所ともすべて南口なので、北口側に住んでいると踏切を越えて駐輪場に行かないといけない。その踏切があの「開かずの踏切」(笑)。北口側で徒歩15分なら、場合によっては自転車を駐輪場に止めて駅に向かうより、駅まで歩く方が早いかもしれませんね。

■部屋を探すときに気をつけたいこと

―個人で部屋を探すときのコツを教えてください。

志村 現在はネットに情報がたくさん載っていますから、まず調べてみてください。2時間くらい不動産情報のポータルサイト(Yahoo!不動産、SUUMO、HOME’S、アットホームなど)を見ていれば、大体相場や、どんな物件があるのかがわかってくると思います。いいなと思う物件があったら、その物件を載せている会社(「情報提供会社」と表示されている場合が多い)のサイトを見てみましょう。

―サイトで物件を探す際に、気をつけることはありますか?

志村 探し始めると気付くかもしれませんが、複数の不動産サイトで、同じ物件の情報が出ていることがあります。その場合は、写真をたくさん出しているサイトの方に問い合わせる方が良いと思います。写真が多いのは、その不動産を良く知っているということ。たまに、外観のみ、間取り図のみしか載せていない場合がありますが、あまりおススメはできません。

―他にはありますか?

志村 同じ物件なのに、サイトによって敷金・礼金の額が違う…というような場合もあります。多くは情報が更新されていないことによりますが、たまに意図的に1カ月分多くとって、情報提供会社が中抜きをしているということも…。

―「こんな不動産会社は怪しい」という場合を教えてください。

志村 サイトに載っている物件について電話で問い合わせた際に、実際にその物件がまだあるのかどうかを明確にしないまま、「とにかく一度、こちらにお越しください」というようなところは辞めた方がいいですね。

―「明日にはなくなる物件です!」というようなことを言われることもあります。あれは…。

志村 人気の物件は本当に明日なくなる可能性もあるので、一概に怪しいとは言えません。その地域で人気の物件なのかどうか判断に迷わないためにも、不動産屋に行く前にあらかじめ予習しておくことが必要だと思います。

―なるほど、丸腰で行くのは良くないのですね。

志村 住みたい物件の目星をつけてから不動産屋に行く人と、漠然と不動産屋に行く人、どちらが効率良く決められるかといえば、やはり前者です。後者の場合、不動産屋のペースに乗せられてしまいやすいとうこともあります。

■トラブルが起きたら

―個人の場合で起こりやすいトラブルを教えてください。

志村 やはり多いのが、ネットで見た物件を電話で問い合わせて「ある」と言われたのに、実際に出向いたら「なかった」という場合。単にページを更新していなかっただけということもあるかもしれませんが、客寄せのための「オトリ広告」として意図的にやっていることも多い。わたしが最近見た中では、3月の時点ですでに入居していた物件を8月中旬に新規物件として登録していたという例があります。

―それはひどい…。

志村 他には、建物に欠陥があったのに修繕してくれないとか。入居者の過失ではなく自然に使っていて壊れてしまった場合は、基本的に大屋さんに修繕義務があります。サービスで不動産会社がやっていることも多いのですが…。それから、退去する際の敷金返金トラブルも割とあります。基本的に自然の汚れ(畳の日焼けや水あかなど)で、入居者の管理責任が問われることはありません。

―初期費用でのトラブルはどうでしょう?

志村 あまりあることではないと思いますが、仲介手数料を1カ月以上取る業者は怪しんだ方がいい。「部屋の消毒代」「会費」という名目をつけて金額を請求される場合も注意してください。そういう場合は、部屋を退去する際にも同じような請求をされると思った方がいい。最近では、「鍵交換代」として1~2万円くらいを請求する業者が増えているようですが、これも本当は請求するほどのコストはかかっていないと思います。

―トラブルが起きた場合、相談できる機関はあるのでしょうか?

志村 東京都都市整備局の不動産業課指導相談係で相談できます。ただ、基本的に何か被害に遭った人の相談を受け付けるので、「オトリ広告を見つけた!」というくらいでは相談できないと思いますが…。また、不動産会社は不動産保証協会など何らかの所属団体に入っています。店内にどの団体に所属しているかプレートがあるはずなので、その団体に連絡してみるのも一つの手だと思います。

―次回は、飲食店など店舗が借りる不動産物件情報についてうかがいたいと思います。

【プロフィール】
志村晃芳(あきよし)さん。都内の不動産会社に務めた後、2006年に、下北沢地域専門の不動産会社「WILL STAGE」を設立。不動産トラブルに関する適切な意見をつづるブログが一部で話題となっている。
Willstage公式サイト
Willstage公式ブログ

(文責:小川たまか/下北沢経済新聞)

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