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風間杜夫さんが語る下北沢、劇団仲間だったシティ―ボーイズ、ひとり芝居

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■子役として忙しかった小学校時代

―風間さんは世田谷区の三軒茶屋がご出身だそうですが、子どものころ、隣の下北沢にはよく行っていましたか?

風間 小学校時代は忙しかったんですよ。子役の仕事が忙しい生活を送っていました。5年生のときは学校にまったく行けず、1年間京都の撮影所に通い詰めでした。だから、あまり行った記憶はありません。

―下北沢に通い出したのはいつごろからでしょうか?

風間 子役の仕事を辞めて、中学・高校と小田急沿線の玉川学園に通い始めました。当時は学校生活が面白くて、帰り道に友人と下北沢で降りてラーメンをすすったりしてよく遊んでいましたね。今でこそ演劇の街で若者のおしゃれな街というイメージがありますが、当時は普通の商店街っていう感じでしたね。

―大学生になってから演劇を?

風間 早稲田大学にある「自由舞台」という演劇サークルにとにかく入りたくて、一浪して早稲田に入りました。入学してからはすぐに演劇を始めました。演劇を始めるようになってから下北沢でも飲むようになりましたね。今でもある「LADY JANE」っていうバーのオーナーである大木さんという方のこともよく知っていますが、あの店がきれいになる前から通って飲んでいました。

■シティボーイズの3人とは劇団仲間だった

―22歳で結成された劇団「表現劇場」に現在シティボーイズの3人(大竹まこと、きたろう、斉木しげる)もいらっしゃったということですが、当時のことで何か憶えてらっしゃることは?

風間 「表現劇場」は演出家も作家もいない役者の集団だったので、公演の度に悩んでいました。で、2年も過ぎると皆がやりたいことが違うということもだんだん分かってきました。大竹はコント志向だし、僕はちょうどつかこうへいと出会ったことも大きかったし、ほかにもバレエを志す役者がいたりと、皆がバラバラ。で、3年もしないうちに解散してしまいましたね。

―今でもシティボーイズのメンバーと会って飲むことはありますか?

風間 去年、久々に大竹から声が掛ったんです。「たまには4人で飯食おうよ」なんて言われて、大竹と斉木ときたろうと僕の4人で飲みました。でも、大竹は昔から酒を飲まないんです。食うことだけが趣味なんですよ。きたろうは昔と変わらず飲んでいましたね。懐かしかった。

―当時の思い出話なども?

風間 昔の話よりも「今どうしてるか?」っていう話題の方が多いですね。大竹の場合はおねーちゃんの話が多くて、元気だなぁと思います(笑)。

―風間さんは、舞台で落語家の役をされたことがきっかけで落語にも取りかかり始めたそうですが、一人で演じる落語と一人芝居は似て非なるものですか?

風間 落語は伝統的な話芸ですから、芸能のスタイルとして確立されているものですよね。一人芝居というのは一人でいながら演劇ですから。照明も衣装も舞台装置もありますから歴然と違うとは思います。でも、一人きりでお客さんと対峙(たいじ)するという点では同じだし、落語の世界はお客さんに話を想像してもらうように、僕の一人芝居も見えない相手役のことを想像してもらうわけだから、その点でも同じですよね。

■前人未到の「一人芝居 五部作一挙上演」に挑戦!

―今回、5本立てということで、休憩を入れて上演時間が約5時間半になると言われていますが、どうして5本立てに挑戦しようと思ったのですか?

風間 3本立ての三部作でやったときに休憩を入れて3時間15分。これが結構疲れなかった。そのときですら周りからは心配されましたが、体力に余裕があるなと思って冗談で「1日で2ステージできるぞ」なんて言ってました(笑)。その後、三部作で演じて来た牛山明の人生を演じることをお客さんが期待してくれる声も多かったので、四部・五部が生まれて五部作。これで完結して、僕の一人芝居は打ち止めにしようと。それを打ち上げ花火のように一挙に五部やってみたら人は驚くだろうなぁと思ったんです。人に驚いてもらうことを企んだ結果、こうなりました(笑)。
 
―五部作を同時上演するにあたって、やはり、けいこ量も5倍なんでしょうか?

風間 今回、けいこ日数がそんなにないんですよ。でも、三部作でも結構全国を回りましたし、四部・五部も去年回ったばかりですから、3日間もあれば思い出すだろうと思っています。

―何か不安な点は?

風間 やはり、体力ですね(笑)。休憩を挟んで5時間30分、僕はずっと舞台上にいるわけですから。気力はあるんですけどね。あと、声が疲れないか心配です。声を持たせなきゃいけないっていう別のテクニックも必要になってくると思っています。

―五部作の一連の作品で演じられる「牛山明」という人物を、1997年の初演「旅の空」から今年まで13年間にわたって演じ続けられています。

風間 ずっと続けて来たのは、牛山明っていう人物に愛着があるというよりも、一人芝居の難しさを痛感し続けているからかもしれません。僕みたいにこんなにも長く一人芝居を続けている人なんてほかにいないんですよ。でも、なんでこんなに長くやって来たのかなって思うと、だんだん自分の芝居が熟してくるっていうか、やる度に進化しているのが分かるんですよね。それがうれしくて続けてきたというのはありますね。

―一人芝居の醍醐味(だいごみ)はどんな所にありますか?

風間 下品な意味で言えば、役者一人で舞台の一人占めですよね。僕が一人芝居にのめり込んだのは、子どものころの遊びと似ていた部分もあるんです。僕は子どものころに「何とかごっこ」とか言って部屋の中で一人遊んでいたような子だったんですよ。それが好きだったんです。僕がその「ごっこ」を楽しめれば、きっとお客さんも楽しいだろうなって思ってます。だから、どの作品も自分で楽しんでやっています。それがお客さんに届いている実感があったので5本やっても大丈夫だろうと思いました。でも、5時間を超える長丁場なので、お客さんの方にも体力的な問題がかかわってくれるかもしれませんが…もの好きな人はきっと付き合ってくれるだろうと思っています。

―五部作の中の第一部「カラオケマン」は、スペイン、中国、韓国、アメリカ、ルーマニア・ハンガリーなどなどでも上演され成功されました。世界のお客さんに受け入れられたという手応えは感じましたか?

風間 日本のカラオケ事情を知らないルーマニアやハンガリーにも行ったんですが、サラリーマンの男がカラオケを営業の武器にして「はっちゃける姿」には、どの国の人も共鳴してくれました。中国の大都市ではカラオケがブームでしたからすんなり受け入れてもらえました。あと、韓国では演劇を志す若者がたくさん来て下さいまして、終わった後も「写真取って下さ~い」とか言われて、学生諸君と集合写真を撮りました。あれは良い経験をさせてもらいました。

―今回の五部作一挙上演、ずばり見どころはどんな点ですか?

風間 13年前に「旅の空」を始めたときは、ちょうど40代の等身大で中年の悲哀を演じていたんですが、それがもう僕自身が還暦も過ぎちゃったので、もう等身大というわけにはいきません。だから、一つの物語として見てもらおうと。50になりかけた男の仕事・家庭・私生活の生き様が描かれていて、決してハッピーエンドではありませんが、いとおしくて人の胸に迫る物語になっていると思います。それと、主人公がチャーミングな男なので笑いの多い芝居という部分も楽しんでいただけると思います。ま、60を過ぎた男が本当にこれできるのかしら?という半信半疑で皆さん来ると思うんですよ(笑)。その興味本位だけでもいいんですけど、とにかく見届けてほしいですね。

■ファン、演劇を志す若者へのメッセージ

―お客さんや、風間さんのファンの方々にメッセージをお願いします。

風間 熱烈なファンの方はもう何度も見ている芝居だとは思うんですが、また改めて舞台上で汗をかいている僕をまた見届けてやってください。

―最後に、下北沢で演劇活動をしている若者へ、風間さんからメッセージをいただけますか。

風間 僕も小劇場から出発してこの年までやり続けているわけで…。演劇はムーブメントというか時代に合わせていろんな演劇が出て来ていると思うんですが、そんなムーブメントの波に乗れなくてもあきらめずに持続するっていうことかな。演劇ってナマモノだから、その時代に生きた演劇っていうのはあるんですが、俳優っていうのは劇団も時代も乗り越えて生き延びられますからね(笑)。だから、演劇を志した役者諸君は途中で投げ出さないで最後まで志を持ってやってほしいですね。

―ありがとうございました。

風間 ありがとうございました。


【風間杜夫ひとり芝居 五部作一挙上演!!】

トム・プロジェクト プロデュース
「風間杜夫ひとり芝居 五部作一挙上演!!」
「カラオケマン」「旅の空」「一人」「コーヒーをもう一杯」「霧のかなた」

出演  :風間杜夫
作・演出:水谷龍二

日程:2010年11月3日(水・祝)~11月10日(水)
場所:下北沢 本多劇場
入場料:全席指定 一般前売り=5,500円 一般当日=6,000円

公演の詳細は「トム・プロジェクト」http://www.tomproject.com

【プロフィール】
風間杜夫(かざま もりお)さん。1949年生まれ。東京都世田谷区上馬出身。1957年、8歳の時に児童劇団「東童」に入団。翌年「東映児童演劇研修所」の一期生となり、すぐに子役としての頭角をあらわす。マキノ雅弘、加藤泰監督など、日本映画史に名を残す名監督の東映作品に多数出演。少年雑誌の表紙を飾るほどの売れっ子になる。1962年、13歳で退団。 早稲田大学第二文学部演劇専修に入学(のち中退)し、演劇活動を始める。1974年、「勝海舟」でテレビドラマ初出演。1976年、「娘たちの四季」(CX)で初のドラマレギュラー。その後は、映画「蒲田行進曲」やドラマ「スチュワーデス物語」などの人気作に続けて出演。2003年には、舞台での演技が評価され「文化庁芸術祭賞演劇部門大賞」「読売演劇大賞最優秀男優賞」などを受賞。


(文責:フルタジュン/劇団フルタ丸、下北沢経済新聞)

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