■偶然、下北沢の同じ不動産屋で家を借りた
―善しさんは下北沢でギャラリーやカフェも経営されています。店を始めようと思ったきっかけを教えてください。
善しさん(以下、善し 敬称略) ギャラリー「イブーイブー」は、自分が絵を描いていることもあって、アートギャラリーなら場所貸しもできるし、自分の作品の展示もできるかなと思って始めました。でもある日、誰もお客さんがいない店で店番をしていて、スペースがもったいなく感じたことがあって、そこからは月に4回、ミニライブもやるようになっています。カフェ「フーフー」(北沢2)は、奥さんの「カフェをやりたい」という希望を受けて、スタートしました。
―下北沢に出店した理由は何だったのでしょうか?
善し 今も下北沢に住んでいるっていうのもあるんですけど、下北ってギャラリーもカフェも多いから、始めやすいかなとは思いましたね。
―お二人とも、いつごろから下北沢に住んでいるのでしょう?
善し 東京に来てすぐなので、13年くらいは住んでいますね
―下北沢周辺に住もうと思われた理由は?
多田健二さん(以下、多田 敬称略) 相方はもう下北沢って決めていて、僕も、知り合いから「住むなら下北がいいよ」って言われていましたね。仕事のスケジュールが二人ほとんど一緒なので、空き時間で何かするにも、近くに住んでいたほうが便利かな、とも思いました。住む以前にも何度か下北に遊びにきていて、いい街だなって思ってはいましたね。
物件を探すときは、ここからすぐ近くの不動産屋に行ったんですけど、「いい部屋、二つしかないよ」って言われて。で、「一つは別のお客さんが内見に行っているから、もう片方を見に行こう」とのことで、その物件を見に行ったんですよ。そうしたら確かによい物件だったので、そこに住もうって決めて不動産屋に戻ってきたら、店に相方がいたんです(笑)。
善し 僕も、図面見ていて、「こっちは、いま内見してるから」って言われて。で、その図面をよく見たらメモで「多田」って書いてあるんですよ。電話番号も一緒に。それで「うそやろ」って思いながら番号を調べてみたら、本当に多田の番号で。驚いていたらちょうどガラガラって多田が帰ってきて。
―優良物件を二人で分けあったんですね。
善し さすがに気持ち悪かったですね、あれは。
多田 でも、僕の住んだ物件は日当たりがあまり良くない1階で、しばらくしたらカビが生えてしまって。3カ月~4カ月くらいでその家を出ることになったんですよ。で、その後しばらくして、岡山で「桃太郎祭り」ってイベントに出たんですけど、そこでロックバンドの「175R(イナゴライダー)」と一緒になって。
打ち上げも一緒に行ったんですけど、そこでギターのKAZYAくんが、「最近、上京したんです」って言うから、家を聞いたら「東北沢」って言うんですよ。僕も「あれ、僕も住んでた!」って騒いで、詳しい場所を聞いてみたら「コスモス東北沢」って言われて、部屋番号も一緒。「それ、僕が住んでたとこや!」っていう偶然があったんです。彼は僕がその家を出たすぐあとに住んだみたいなんですけど、そこから「イナゴライダー」が大ブレークしたんですよね。
―そんな偶然あるんですね! 「その部屋に住むと売れる」って謳(うた)えそうですね。
多田 そうなんですよ。あの部屋の「カビ」を浴びると売れるという、「縁起がいいカビ」なんです(笑)。
■「下北沢のグルメマップを作ろうとしていた」
―もう少し下北沢のお話を聞かせてください。上京したてのころは、下北沢のどのあたりによく行っていたのですか?
善し 「ディスクユニオン」(北沢1)、「ヴィレッジヴァンガード」(北沢2)、「ドラマ」(北沢2)とかは、かなり行きましたね。
―多田さんはいかがですか?
多田 当時はたむらけんじさんが東京にいて、二人でよく下北沢を歩いていました。「たむけん・ただけんのグルメマップみたいの、いつか出そうか」って言いながら(笑)。でもその後、たむらさんはすぐに大阪に帰ってしまって。グルメマップを出すどころか焼き肉屋だしちゃって(笑)。
―たむらさん、よほどグルメだったんですね。下北沢でおすすめのお店はありますか?
多田 居酒屋なら「都夏(つげ)」(代沢5)ですかね。ラーメンなら「そると」(代沢5)。とんかつ屋の「とん水」(北沢2)とかは、白ご飯がおいしくて好きです。あと、魚を食べるなら「にしんば」(北沢2)か「とぶさかな」(代沢5)ですよね。
■子どもがグズらない工夫をするお笑いライブ
―「お笑い秘密基地」の「子どもをメーンにしたお笑いフェス」というコンセプトはどういったきっかけで生まれたのですか?
善し 「あたり前体操」がヒットして、僕らのライブに子どものお客さんが増えてきて、そこから単独ライブには「子ども料金」を設定するようになったんです。一方、それぐらいから日本でもロックフェスが盛り上がってきていて、「じゃあ、子どもも参加できるお笑いフェスをやったらどうやろう?」ってよしもとに相談したのがきっかけですね。
その前から「よしもと幕張イオンモール劇場」で日曜日の朝から1時間、ファミリー向けライブをずっとやっていたから、そういうのもつながってきているとは思っています。あとは、僕らが家庭を持ったっていうのもありますけど(笑)。
子どもってグズったりするじゃないですか。それでも気楽に親子で見に来れるお笑いライブっていうのがあれば、面白いんじゃないかと思ったんです。
―やはり、ふだんのお笑いライブでは、観客席の子どもがグズるとやりづらくなりますか?
善し 子どもの人数って、大人との比率で見たらとても少ないんですよね。だからグズると目立ってしまう。フェスというかたちで、子どもがたくさんいれば、それも目立たなくなるだろうとは思いました。当日も、いろいろと遊べるコーナーを設けていて、お笑いライブがない時間も飽きさせない工夫をしています。
■「あたり前体操」に対する子どもからのリアクション
―お二人ともお子さんがいらっしゃいますが、2011年に「あたり前体操」ができたとき、お子さんたちのリアクションはどういったものでしたか?
善し リアクション…。そういうの、あるかなって思ってたんですけど、周りではやってたころには、うちの子たちは全然やってなくて、世間と家庭内にギャップが…(笑)。
映像自体ができたのが2011年3月で、その時点で子どもには見せたんです。そのときは喜んでくれていて。その後、子どもたちの間では「あたり前体操」じゃなくて「まるもり体操」がブームになったんですよ。それでも、うちの子どもたちは「私たちは、当たり前体操が好きや」って言ってくれていて(笑)。
で、その後、「まるもり体操」ブームが終わって、ようやく「あたり前体操」がはやったんですけど、そのころにはうちの子どもたちは完全に飽きていました(笑)
―かわいらしいエピソードですね。でも最初にファンになってくれたのは、お子さんたちだったんですね。そこで子どもにウケたっていうのは、全国の子どもにも受け入れられると確信を得られたんじゃないですか?
善し そうですね、映像ができたときは、「これはいけるかも」と思いました。
―多田さんのお子さんのリアクションは、いかがでしたか?
多田 僕のところは、かなり面白がってくれましたね。でも、「子どもだからこんなレベルでええやろ」って作り方をすると、えらい目に遭うって思っていて。
お笑いって、親や兄弟と一緒に見るから、ちょっと背伸びして見てると思うんですよね。子どもながら、テレビに出ているコンビのことを分析したりとか。そういった面もあって、「あたり前体操」も、子ども向けに作ったと言うよりは、「子どもにも認知されていた」という感覚が強いんです。子どもだましみたいなつもりでは、やれなかったです。だから、「『あたりまえ体操』、子どもに人気あるよね」とか言われると、カチンとくる時があります(笑)。
善し あの…軽く答えましょう?(笑) 「お笑い秘密基地」の取材ですから(笑)。
■「毎年のイベントとして定着させていきたい」
―下北沢も最近、お笑いライブができる会場が増えてきているのですが、お二人が若いときは、練習など、どんな努力をされていましたか?
善し ステージに立つ前に、アメリカ村の三角公園とかでよく練習をしていましたね。「ネタ見てください」って言って人集めてやっていました。度胸試し、ネタ試しができる場所がそれぐらいしかなかったんですよね、当時は。下北沢も、たまにそういうことしてる若手の方を見かけますけど。
―「お笑い秘密基地」に出演する若手メンバーのブッキングはお二人でされたんですか?
善し そうですね、スケジュールが合わなかった人もいるんですけど、自分たちが「面白い」って感じた若手には、声をかけました。今回はよしもとだけになっちゃいましたけど、子どもにもネタがわかる、子どもまで笑わせることができるメンバーなんで、ほぼパーフェクトなメンツだと思っています。個々のネタはもちろん、コラボ企画もやろうと思ってます。「バンビーノ」なんかは、ご当地キャラとコラボしてネタをやる予定です。普段のライブでは見られないようなネタを、ところどころで見られるんじゃないかと思います。
―最後に、イベントへの意気込みを聞かせてもらえますか?
善し そうですね……、今回は初回ということもあって、チャレンジ的な要素が強いんですけど、相当お得なライブだと思っています。値段の割にメンバーが豪華ですから。自分の子どもやその友達も、チラシを見るだけで「いいなあ」ってすごいテンション上がってくれているみたいで。小学生も中学生も、楽しめるイベントにしたいですね。
多田 メンツが豪華なうえにご当地キャラもいて、こんなお得なライブ、ほかにないでしょと思っています。これが毎年なのか、半年に一回なのかわかんないですけど、「夏はお笑い秘密基地!」みたいに定着させていきたいですよね。定着しないと、やる意味もないように感じるので。まずは初回となる今年、全力で頑張りたいです!
(文責:カツセマサヒコ/下北沢経済新聞)
【プロフィール】
お笑いコンビ・COWCOW(カウカウ)
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。1993年結成。(左)多田健二(ただけんじ)さん。1974年生まれ、大阪府出身、B型。(右)善し(よし)さん。1974年生まれ、大阪府出身、O型。
【当日情報】
COWCOW PRESENTS こどもフェス「お笑い秘密基地」
8月8日(土) 9時半開場/10時開演/14時終演予定
@東京・ルミネこだいら大ホール
料金は前売り=幼児・小学生(4~11歳)2,500円、中学・高校生(3,000円)、18歳以上3,500円。当日=幼児・小学生(4~11歳)3,000円、中学・高校生(3,500円)、18歳以上4,000円。「チケットよしもと」などで販売している。
【9月以降の出演情報】
― 単独ライブ「COWCOW LIVE2015~USHI ROCK FESTIVAL~」
沼津公演 日時:2015年 9月26日(土)19:30開演 会場:沼津ラクーンよしもと劇場
東京公演 日時:2015年10月17日(土)19:30開演 会場:ルミネtheよしもと
大阪公演 日時:2015年11月 8日(日)18:00開演 会場:梅田Zeela
【料金】 [大人]前売3,000円 / 当日3,500円 [子供]前売2,000円 / 当日2,500円 ※11歳以下対象