「2010年本屋大賞」ノミネート作品が1月22日に発表され、作家で下北沢の書店「フィクショネス」(世田谷区北沢2)店主でもある藤谷治さんの最新作「船に乗れ!」(ジャイブ刊)が候補になった。
本屋大賞は「全国の書店員が一番売りたい本を選ぶ」というコンセプトで2004年に創設。過去に小川洋子さんの「博士の愛した数式」(新潮社)や恩田陸さんの「夜のピクニック」(同)が大賞に選ばれている。7回目となる今回は、昨年11月1日~今年1月11日に行われた全国の323書店・385人の書店員による1次投票でノミネート作品が決定した。候補作は村上春樹さんの「1Q84」(新潮社)、小川洋子さんの「猫を抱いて象と泳ぐ」(文藝春秋)、川上未映子さんの「ヘヴン」(講談社)など10作品。
藤谷さんは1963(昭和38)年生まれ。洗足学園高校音楽科でチェロを学んだ後、日本大学芸術学部映画学科を卒業した。会社員などを経て、1998年に同店をオープン。店名はJ.L.ボルヘス作の伝奇集の原題「FICCIONES」に由来する。その後、店を訪れた編集者の勧めで小説を書き始め、2003年に「アンダンテ・モッツァレラ・チーズ」(小学館)でデビューした。2006年には下北沢で「箱貸し」の店を営む男性を主人公にした「下北沢」を刊行。2008年に「いつか棺桶はやってくる」(小学館)で三島賞候補に選ばれた。「船に乗れ!」は3部作で、藤谷さんにとって13作目の小説となる。
ノミネートの知らせを受けた藤谷さんは「M-1のファイナリストになった気分」とコメント。同作の主人公はチェロを学ぶ高校生で自伝的要素が強いとされているが、「どこまでがノンフィクションでどこまでがフィクションかは、ご想像にお任せする」としている。
同賞の2次投票は2月28日まで実施され、4月20日に大賞が発表される。