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【シモキタ歴24年のカレー激ハマリ芸人ピストジャムが愛してやまない下北沢カレー10選】File.3~46ma(シロクマ)

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吉本興業のピン芸人、ピストジャムです。僕は、20歳のころにシモキタに越して来ました。カレー好きの僕にとっては、この街は天国です。

この特集では、僕が全責任を持って推薦する、美味しいカレーが食べられる店を紹介していきたいと思います。

File.3~46ma(シロクマ)


平日30食限定のチキンカレー(1,200円)。ホロホロの柔らかい肉と野菜のうまみが口いっぱいに広がる絶品の一皿。サラダがつく
日本テレビのスタジオで、極楽とんぼの加藤さんが『46ma』のカレーをほおばりながら言う。

「レベル高い。めちゃめちゃレベル高い。全然変化球じゃなくて、カレーの王道からはずれてなくてレベル高いって、相当ですよ」

感激した。このカレーには特別な思い入れがあったから、本当に自分のことのようにうれしかった。

これは、先日『スッキリ』の「わたしの推しゴト」というコーナーに出演した際のひと幕だ。僕は、カレーマニア芸人として出させてもらい、『46ma』のカレーを紹介した。

シモキタの駅を出て、ヴィレッジヴァンガードの前を通り、ライブハウス『SHELTER』に向かって真っすぐ進むと、『SHELTER』の手前に左に入れる路地がある。『46ma』は、その路地に入ってすぐのところにある。

店主の名は、イクさん。僕は、彼女のことを20年以上前から知っている。

イクさんは、鈴なり横丁で『Giraffe(ジラフ)』と『Kaelu(カエル)』というバーを経営していた。僕は、その『Kaelu』の最初のバイトだった。

当時からイクさんがつくるカレーは絶品だった。バーで出すカレーとは思えないクオリティで、僕はそのまかないを食べるために働いていたと言っても過言ではなかった。

そのころのお気に入りは、キーマカレーとチキンカレー。スパイスが肉のうまみを存分に引き出していて、ターメリックライスとの相性は抜群だった。

僕の胃袋は、完全に彼女につかまれた。働きながら「ここのカレーめっちゃおいしいんで、一回食べてみてください」「そのへんのカレー屋よりおいしいですよ」と、飲んでいる客にしきりにすすめていた。

『46ma』がオープンしたのは、僕がバイトを辞めたあとだった。シモキタの再開発で、鈴なり横丁の半分だけが取り壊され、あのあたりに大きな道路ができるという噂が飛び交った。『46ma』はそのあおりを受け、『Giraffe』と『Kaelu』につぐ3店舗目として誕生した。

「これはものすごくおいしいですね。香辛料のクミンのさわやかさもあるし、深みがすごいですね」

加藤さんの隣で食べていた磯村勇斗さんにも絶賛だった。

『46ma』のチキンカレーには7種の野菜が入っている。タマネギ、ニンジン、ピーマン、パプリカ、セロリ、ニンニク、ショウガ。これらをみじん切りにして炒めて煮込んでいるので、ルーに野菜が溶け込んでいる。さらにスパイスは12種類。クミンとタイムはホールスパイスで入っている。完成したルーは冷凍庫で1週間寝かせ、これによりコクがぐっと増し、味に深みが出る。先ほどの磯村さんのコメントが、いかに的確なのかよくわかる。

「お肉が、またどんな仕事したらこんなやわらかくなるんだっていうぐらいの、スプーンを通したらすーっと溶けちゃうくらいやわらかあい」

優木まおみさんも続ける。僕は、もう天にものぼるような心地だった。

僕には、信じて疑わないことがある。それは、シモキタが「カレーの街」と言われるようになったのは、この『46ma』があったからこそだと。

20年前は、誰もシモキタを「カレーの街」なんて呼んでいなかった。そう呼ばれ出したのは、ここ10年の話だ。

2012年に下北沢カレーフェスティバルが始まると、シモキタにはみるみるカレー店が増えていった。カレーフェス期間中は、ふだんカレーを提供していない店も期間限定でカレーを出したりして、大いににぎわうようになった。こうして、シモキタは「カレーの街」として世に認知されていった。

『46ma』は、その下北沢カレーフェスティバルの前身のイベントである、第1回下北沢カレー王座決定戦で優勝した。この企画は、その後も4年に1度のペースで開かれ、『46ma』は2015年に開かれた第2回大会でも優勝し、連覇を果たした。ちなみに僕は、さらに4年後の2019年に開かれた第3回大会で下北沢カレーアンバサダーの称号を手にした。

このカレー王座決定戦は、なぜ開催されることになったのか。それは、のちにカレーフェスの総合プロデューサーになる岩井さんという方が、『46ma』で飲んでいたときに、

「何かシモキタの町おこしになるようなイベントないかな」

とイクさんにこぼしたことがきっかけだった。

彼女は、そこで、

「カレーのイベントやってよ。私、カレーつくるのめちゃくちゃうまいんだよ」

と答えたのだ。

もし彼女が、そのとき、

「おでんのイベントやってよ」

と言っていたら、シモキタはカレーの街ではなく、おでんの街になっていたかもしれない。

20年来の顔見知りというオーナーシェフのイクさん(左)と著者
放送が終わったあと、イクさんに挨拶しに行かないとな、と思っていたら、彼女の方から僕の楽屋に来てくれた。

「あんた、よくあんなにすらすらしゃべるねえ」
「一応、芸人なんで」


笑うイクさんの顔を見ると、ほっとした。いつもの、シモキタでの会話。

平日限定30食。料理はチキンカレーのみ。

カレーの街シモキタを生んだ聖地『46ma』。ぜひ足を運んでいただきたい。

【店舗データ】

46ma(シロクマ)
東京都世田谷区北沢2-7-2
03-4291-4513
12:00~翌5:00
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください

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