プレスリリース

当社社員・近藤康平らの論文が国際会議「SEKE 2026」でBest Paper Award(第2位)を受賞

リリース発行企業:株式会社アンチパターン

情報提供:




株式会社アンチパターン(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO兼VPoE:小笹佑京、以下「当社」)の社員である近藤康平が、2026年10月1日から2日にカナダ・トロントで現地開催された国際会議「The 38th International Conference on Software Engineering and Knowledge Engineering(SEKE 2026)」で発表した共著論文が、「Best Paper Award(第2位)」を受賞しました。

受賞対象となった論文は、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)で近藤が取り組む研究成果をまとめたものです。プログラミング言語Goの並行処理を中心とする部分集合について、K Frameworkを用いて実行可能な操作的意味論を構築しました。なお、本研究は近藤が個人としてJAISTで取り組んでいる研究であり、当社の業務として実施したものではありません。
受賞について
SEKE(International Conference on Software Engineering and Knowledge Engineering)は、ソフトウェア工学および知識工学の専門家が集まり、両分野の研究成果について議論する国際会議です。公式開催案内では、特に両分野間における手法の相互活用を重視すると説明されています(公式案内の趣旨を日本語で要約)。
第38回となるSEKE 2026は、2026年10月1日から2日にカナダ・トロントで現地開催され、10月4日から10日にはオンラインでも開催されました。近藤本人が現地で論文を発表し、Best Paper Awardの第2位に選ばれました。
会議公式サイト:https://ksiresearch.org/seke/seke26.html
研究の背景
Goは、goroutineやchannelを用いた並行処理に加え、deferやpanic/recoverなどの実行制御機能を備えるプログラミング言語です。これらの機能が組み合わさると、処理の実行順序や状態の変化を体系的に捉え、プログラムの動作を検証することが難しくなります。
形式意味論は、プログラミング言語の振る舞いを曖昧さのない規則として定義する手法です。その一種である操作的意味論は、プログラムの実行状態がどのように変化するかを規則によって表現します。
研究の概要
本研究では、Goの言語仕様全体ではなく、並行処理を中心とする機能を「claimed subset(範囲を明示した部分集合)」として定めました。対象には、次の機能が含まれます。
- goroutine、channel、select、closure、defer、panic/recover
- これらを扱うプログラムに必要なpointer、interface、structなど

このSubsetについて、K Frameworkを用い、プログラムの実行状態とその変化を書換え規則として定義しました。K Frameworkでは定義した規則に基づいてプログラムを実行できるため、実行可能な操作的意味論としてGoの振る舞いを検証できます。

本研究の特徴は、Go言語全体との互換性を主張するのではなく、対象範囲を明示して検証結果と根拠を対応づけている点です。論文では、Goの公式言語仕様に基づく73項目の検証対象について、期待される結果との一致を確認したことを報告しています。検証には正常終了、panic、静的エラー、ブロッキングを扱うケースが含まれます。
ソースコードと検証成果物を公開しており、研究で定義した範囲と検証結果を第三者が確認できるようにしています。
研究の発展とGo言語への貢献
この研究をさらに発展させる過程で、Goの公式言語仕様に基づいてプログラムの動作を比較・検証した結果、Goコンパイラに関する2件の不具合を発見し、Go公式リポジトリに報告しました。Goの開発者が修正を行い、いずれも2026年9月に修正コードが取り込まれました。
この成果は、言語の振る舞いを明示的に定義し検証する研究が、実際のプログラミング言語処理系の品質向上にも貢献し得ることを示しています。なお、上記の不具合報告と修正は、SEKE 2026での受賞に先立つ成果です。
関連するGo公式Issue:https://github.com/golang/go/issues/81696 / https://github.com/golang/go/issues/81697
受賞・論文情報
受賞:Best Paper Award(第2位)
会議名:The 38th International Conference on Software Engineering and Knowledge Engineering(SEKE 2026)
開催:現地 2026年10月1日〜2日(カナダ・トロント)/オンライン 2026年10月4日〜10日
論文名:A Concurrency-Centered Executable Semantics for a Claimed Subset of Go in the K Framework
著者:Kohei Kondo、Canh Minh Do、Kazuhiro Ogata(いずれも北陸先端科学技術大学院大学〔JAIST〕)
掲載:Proceedings of SEKE 2026, pp. 25-30
会議公式サイト:https://ksiresearch.org/seke/seke26.html
論文(Proceedings PDF):https://ksiresearchorg.ipage.com/seke/Proceedings/seke/SEKE2026_Proceedings.pdf
研究成果の公開先:https://github.com/0xkohe/go-semantics-k
当社の取り組み
当社では、業務とは別に研究活動に取り組む社員について、それぞれの状況に応じて業務の調整や技術イベントへの参加支援などを行っています。今回に関しては本人と相談のうえ、Cloudflare Connect 2026への参加を支援することとしました。
コメント
代表取締役CEO兼VPoE 小笹 佑京
ソフトウェアエンジニアリングの研究は、短期的な事業成果に直結しないことも少なくありません。一方で、個人としてはソフトウェアエンジニアとしての基礎体力を高め、技術を見る目を鍛えることのできる活動だと考えています。今回のような個人の活動を支援するにあたって、何かしら褒賞制度のような画一的な制度を設けてしまうと、その支援の柔軟性と迅速性を損なうリスクがあると考えており、現時点においては明確な制度を設けておりません。今回はCloudflare Connect 2026への参加を支援することとなりました。近藤の受賞を心から祝福するとともに、事業運営やソフトウェア開発のみならず、研究にも取り組む社員が挑戦しやすい環境づくりを続けていきます。

近藤 康平
このたび、このような賞をいただくことができ、大変光栄に思います。JAISTでの研究と日々の業務を両立するうえで、個人の挑戦を尊重し、柔軟に支援してくれる当社(アンチパターン)の皆さんにも感謝しています。研究を進める中でGoの実装上の不具合を発見・報告し、実際の修正につながったことは、形式意味論の研究がソフトウェアの品質向上にも役立つと実感する経験となりました。今後も研究で得た知見を日々の開発に生かし、研究と実務の両面から新たな技術的課題の解決に取り組んでいきたいと考えています。
会社概要
会社名:株式会社アンチパターン
代表者:代表取締役 小笹 佑京
所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-20-18 5F
設立:2019年7月
事業内容:SaaS開発・提供。マルチテナントSaaSの認証・認可、テナント管理、課金・請求などを担う「SaaSus Platform」、SaaS化支援プログラム「10 Days SaaSification」を提供
URL:https://anti-pattern.co.jp/

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